ネタバレ注意!藤崎竜の際立つオリジナル漫画「サクラテツ対話篇」 | このマンガが目に入らぬかっ!- 漫画のネタバレ・レビューサイト

藤崎竜作品の中での漫画「サクラテツ対話篇」とは

藤崎竜先生と聞いて、多くのマンガ愛好者は「封神演義」や、最近連載中の「銀河英雄伝説」を思い浮かべるのではないでしょうか。

前者は週刊少年ジャンプ史上でも有数の長期連載タイトルとして藤崎竜という漫画家の名を世に知らしめ、後者はスペースオペラの大作として金字塔を打ち立てた作品が21世紀に挑むコミカライズとして大きな期待を寄せられるものと言えるでしょう。

そんな「名作メーカー・藤崎竜先生」のイメージを完膚なきまでにブチ壊す、手抜き無しの全力全開クレイジー作品が「サクラテツ対話篇」なのです。

このように紹介すると駄作のように聞こえ、単行本は上下二冊、文庫版で一冊にまとめられるコンパクトサイズの連載期間だったので打ち切りのように見える事もまた事実です。

しかし、藤崎竜先生の美麗なタッチで描かれるキャラクター達が「封神演義」では時折見せるだけだった勢いのあるギャグを密度・濃度共に一切の妥協も容赦も無くブチ込んで来る威力は凄まじいの一言に尽きます。

それは一見してとてつもない力技のギャグであるにも関わらず、藤崎竜先生が様々な試行錯誤を重ねた作画によって濃密な説得力が生まれてしまう「謎の感動」に満ち溢れるもの。

無統制な破天荒が、破綻無く収まった秩序あるカオスが織り成す美しき醜悪を心行くまで堪能出来る作品です。

藤崎竜先生の漫画「サクラテツ対話篇」の概要と向き合い方

サクラテツ対話篇は、条理を徹底的に破壊するギャグマンガです。

真面目に読む事は基本原則として推奨されません。

何故なら、東京都に宛内区という都内一等地は現実に存在しません。

この時点で条理が通用しない事を認識する必要があります。

東京都に存在しない一等地の高過ぎる固定資産税その他の税金を納め、土地の所有権を維持し続ける為、主人公桜テツ(さくら・てつ)は幼稚園の頃からアルバイトに勤しみ続ける高校生であり、サクラテツ対話篇とは、その幼馴染の女子高生である出井富良兎(いでい・ふらと)が、その驚異的生態を観察し続けた著述物なのです。

そんなある日、桜家の土地は未来人と宇宙海賊と地底人から襲撃されます。

この異常事態を皮切りに、桜家の土地を狙う変態もとい侵略者との戦いの日々が始まるのでした。

重ねて主張しますが、この作品は、かの名作を生み出した「藤崎竜」先生の生み出した作品であり、この荒唐無稽を通り越した正気を疑われる文章が「藤崎竜」先生の手による美麗な漫画として世に送り出されています。

この一連の事実だけで、一読せずに死ねるかと主張して憚らないものがあるのです。

一見して狂気しかない内容を、圧倒的理性でなければ描き得ない美麗な作画によって完成させるというその不条理にこそ「藤崎竜」という作家が持つ真の面白さが凝縮されていはしまいかと考えてしまう次第なのです。

藤崎竜先生の漫画「サクラテツ対話篇」とは哲学である!

サクラテツ対話篇は、登場人物の名前などに西洋哲学の人物や書物の名前を導入しており、それが得も言われぬ不思議な語感を形成している事にも面白さがあります。

サクラテツ対話篇を通して原典に触れ「どうしてこうなった!」という更なる混沌を楽しむのも一興ですので、ネタバレを踏まえつつ分かりやすいものをピックアップしてみました。

サクラテツ

主人公の名前であり、古代ギリシャの哲学者「ソクラテス」をもじったものと見られます。

かのソクラテスも貧困な暮らしをしていたと伝わりますが、税金を納める為に働いたという訳ではないそうです。

イデイフラト

テツの幼馴染の名前であり、ソクラテスの弟子「プラトン」をもじったものでしょう。

イデイ姓は、プラトンの主たる思想である「イデア」の観念からであろうと見られます。

プラトンはソクラテスの言行を対話篇形式で多く残したとされ、今日知られるソクラテス像もまた、プラトンの著述に拠る所が多いと伝えられます。

久散(クサン)、鉄瓶(テッペイ)

テツの姉と弟。

その正体はクサンが地縛霊、テッペイは座敷童子。

ソクラテスの妻であり、悪妻の代名詞ともされてしまった「クサンティッペ」が名前のルーツと見られます。

ソクラテスが哲学者として人生を捧げた結果、家庭を余りにも顧みなかった面はあると伝わるので、そこは割り引いて考えても良いのかもしれませんね。

イデイキセノ

フラトの兄。

ソクラテスの弟子の一人である「クセノポン」からもじったものと見られます。

テツが滅ぶ一瞬に美を見出そうとする魔性の美少年という描かれ方をしていますが、クセノポンがそういう人物であったかは定かでありません。

ソクラテスに対して批判的な論旨からの著述を残しているとされます。

アリス

侵略者その一である未来人。

ソクラテスの弟子「アリストテレス」からもじったものと見られ、地球に優しい自然科学の力で月をも穿ちます。

アリストテレスその人は、今日西洋に端を発する「哲学」や「科学」の源流となる著述を体系立てた人物として著名です。

ファイヤアーベント

侵略者その二の宇宙海賊。

実に宇宙海賊染みた名前ですが、20世紀の哲学者「ポール・ファイヤアーベント」という人が実在しています。

アナーキズムに影響を与えたという所が宇宙海賊のイメージソースになったのでしょうか。

プリンキピア・マテマティカ

宇宙海賊が乗る宇宙船の名前で、日本語では「数学原理」と訳されます。

ファイヤアーベントが書いたものではありませんが、数学の哲学的考察を深めた大著として知られるものとなっています。

ジークムント

侵略者その三は地底人の王。

大変強そうな名前ですが、精神分析学の父とされ、多くの哲学者にも影響を与えた「ジークムント・フロイト」がその名前と関わるでしょう。

精神を掘り下げる心理分析と、地底を掘るイメージが関係…あるかどうかは深く考えずに読んでも良いものです。

このように、少し元ネタと思われる部分へ踏み込むと、元ネタへの確かな理解があるのではないか…と思える作りになっている「サクラテツ対話篇」。

「藤崎竜」先生の、元ネタへ対する確かな理解に基づく発露が「サクラテツ対話篇」のような作品を生んだと思えば、この完成された狂気も味わい深く、同時に元ネタを知りたいという知的好奇心を芽生えさせるものになるのではないかと、実は本気で考える次第です。

狂気と正気を行き来する愉快な思考実験を、一度味わってみるのはいかがでしょうか。

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