ネタバレ注意!寓話的でシニカルな短編集「金の靴 銀の魚」

寓話的でシニカルな短編集「金の靴 銀の魚」この漫画に出会った経緯

短編集「金の靴 銀の魚」は本屋に平置きされていたものを見かけて手に取り、絵本のような繊細な水彩のタッチの表紙の絵が印象的で思わず購入しました。

数編の、全く題材の異なる物語で構成されている短編集です。

ナンセンスもの、ひやっとするもの、不条理なもの、都市伝説のようなものまで、シュールかつ湿度の高いリアリティある息遣いを作中に感じる中、どこか作者自身は物語を突き放した様子が感じられるため、ドライでとても読みやすい作品ばかりです。

明るいわけでもないけれど、なんとなく少しだけ救いがあります。

全体を通して感じるのは、訓戒を含んだ寓話を集めた絵本のような漫画、という印象でした。

かなりの頻度でくすっと笑わされます。

中でも文学性が高く、印象に残った二作品を以下に挙げます。

寓話的でシニカルな短編集「金の靴 銀の魚」ボタンの合わないシャツを着た女性の話「ボタンと穴」

寂しい漫画です。

「世界と自分とのズレのようなもの」を日々の中に感じている人間は少なからずいるのだろうなと考えさせられます。

以下ネタバレです。

一人の若い女性がある日、自分の着ているシャツのボタンと穴がうまく合っていないことに気づきます。

彼女は様々な人と出会っては、相手のシャツのボタンと穴が自分のシャツと合うかどうか試してみますが、完全に自分と合うシャツを着た人は見つかりませんでした。

ラスト、自分のシャツの穴とぴったり合うのは町境(?)の壁に打ち込まれた釘であることがわかるのですが、壁に寄り添った女性は満たされた安堵を覚えながらも、「ここにいても仕方ない」と気付き、家へと帰っていきます。

ラストの見開きのコマはデ・キリコの作品を思わせるような夕景でした。

諦めから生まれる安堵と、絵の線の美しさがこの物語の魅力の鍵を握っていると言っても過言ではないと思います。

しかし短編集の全編が「ボタンと穴」に見られるような、頼りなく儚げなタッチで描かれていたとしたら、食傷気味になってしまうかも。

作者は画力がある方なので、多様なタッチの絵を見させてもらえるのもまた、この本に飽きない理由かもしれません。

寓話的でシニカルな短編集「金の靴 銀の魚」表題となっている作品「金の靴 銀の魚」

一言でいえば、ホラーでした。

一人の靴職人の若い女性が、必死に自分の生き方を見つけていこうともがく物語です。

以下ネタバレです。

主人公マルタは不器用な女性です。

彼女は靴職人。

若いながらも腕は良く、一人でお店を構えて切り盛りしています。

マルタは来店されるお客さんの足に合うように靴を加工したり、修理したりと「平穏で地味で、ちょっとつまらないような日常」を淡々と重ねていく毎日を過ごしています。

ある日、行商人の若い男性が店に寄ります。

彼はマルタの作った靴をとても気に入るのですが、手持ちがなく、代わりに商品の魚を置いていきます。(どうやらドクター・フィッシュのようす)

その男性に心ときめくマルタですが、奥手すぎて何一つアプローチ出来ないままに男性は旅に出てしまいます。

そしてマルタはいつもの日常へと戻っていきます。

引っ込み思案な性格のマルタは、残念ながら友人にも恵まれておりません。

唯一、女友達らしき?女性が店に遊びに来るのですが、愚痴やひけらかし、噂話をしに来てはマルタの気持ちが揺れ動くのを観察して楽しんでいるような、浅はかなタイプの女性です。

悪気はなさそうなのでこれまた面倒くさい感じです。

ちなみにマルタは華やかで優しい同級生のアリシアに羨望に似た嫉妬を感じており、時々彼女を思い出しています。

マルタは靴作りに勤しみ、とうとう賞を取ります。

喜ぶマルタですが、その場で友人から、アリシアが資産家と電撃結婚したという噂を聴きます。

マルタが複雑な思いを抱えながら結婚式の披露宴へと向かうと、アリシアの夫はあの行商人の男性でした。

対面する三人。

マルタはアリシアに贈ろうと持ってきた魚の鉢を抱えてその場から逃げるように帰ります。

ラスト、どこまでも大きくなる魚を気味悪がるマルタの友人と、それを見て笑顔で言葉を返すマルタの表情から、希望とも諦めともつかぬものを匂わせて物語は幕を下ろしました。

マルタの感情の複雑な綾の表現にはいつも不穏な空気が付きまとい、秀逸でした。

彼女は素朴で一生懸命な女性なので、幸せになってほしいと私は個人的に強く願いました。

主人公の人間としての芯の強さを感じさせられる作品でした。


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